日本科学者会議(JSA)沖縄支部 1998.6

琉大セクハラ・違法実験等問題調査委員会 速報2号

農学部教授会:懲戒免職処分が相当と決議

 B留学生に対する性的暴力、データ捏造、違法違反実験の事実を認定した去る4月の判決を受けて、A助教授の処分について検討していた琉球大学農学部教授会は、6月10日(水)午後、以下の決議を行った。

懲戒免職処分について学長宛てに要請する。

教授会メンバーの出席者53名のうち、賛成43、反対8、白票2の圧倒的多数の賛成による決議であった。本事件が発覚した3年前、マスコミなどで自浄能力の欠如を強く非難された琉大農学部は、今回の決議によりその自浄能力の回復と良識を示したことになる。

 今後は、評議会が、どのような内容の処分を決定するのかが焦点となる。

 一方、琉大当局は、4月の判決言い渡しの後、「新たな処分をするつもりはない」という判断を公表している。去る5月29日に行われた琉大教授職員会との学長懇談会で、農学部A助教授の処分について学長は、以下の二点を表明している。

(1)農学部教授会の判断を尊重する。

(2)農学部での判断を受けた後、学内の法律の専門家に相談しながら琉球大学としての態度を決める。

 上記の(1)については、その通りであり、学長は、自らの発言を実行に移すべきである。上記の(2)については、学長は、いったいどのような法律上の問題があるとしているのであろうか。3年前のA助教授に対する処分においては、(1)違法違反実験を行ったこと、(2)セクシュアルハラスメントを受けたとB留学生から訴えられたことの二点が対象となった。今回の農学部教授会の決議は、4月の判決で新たに認定された事実、すなわち、(3)性的暴力および (4)データ捏造、に対する処分を求めるものである。従って、再処分あるいは二重処分にはあたらず、学長の言う一事不再理の原則(一つの事で二度処分を行ってはならないという原則)に何ら反しない。さらに民事訴訟の裁判で認定された事実に基づいて処分することも法律上何ら問題はない。

 仮に、琉大がA助教授に対する新たな処分を行わないか、軽い処分で終わらせたとすれば、今後同種の事件が生じた場合、加害者は、事実を否認し続けるというA助教授と同様の方法を用いることにより、軽度の処分だけで終わらせることができることになる。従って、せっかく作ったセクシュアル・ハラスメント防止のための指針(職員の服務規律に関する検討委員会が平成10年3月25日に学長に答申したもの)は、事実上セクシュアル・ハラスメントを抑止する機能を果たさないことになり得る。

 A助教授に対する新たな処分について評議会がどのような決定を行うかは、セクシュアル・ハラスメント問題についての今後の琉大の対応を方向付ける重要なものである。

3年前の最も軽い戒告の処分の際には、法文学部の法律を専門とする教授が中心となってA助教授を庇う運動を強力に行い、結果として、砂川急伸学長(当時)による、不当にA助教授に甘い処分となった。4月の判決言い渡しの後、大学当局が、評議会に諮ることなく、「処分せず」の判断を公表したことや桂学長が上述の(2)のハードルを設けたことには問題が残る。

 

 桂学長が、3年前の砂川学長と同様の轍を踏まぬよう、さらにまた依願退職という形での処分を回避した「逃げ得」を許さぬよう、各評議員、琉大教職員および市民が監視していかなくてはならない。

琉大セクハラ・違法実験等問題調査委員会 速報1号

「農学部Y助教授事件についての公開質問状」(1998年6月1日)

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