主要国首脳会議開催にあたっての声明

 来る7月21-23日、沖縄において主要国首脳会議(以下「サミット」という)が開催されるにあたり、次の声明を発表する。

1. サミットは、「西側」先進国の首脳の会議として1975年以来開催されてきた。その主要な目的は、石油危機やドル危機に対応して先進諸国間の利害を調整し、一致した経済・国際政策を進めるところにあった。1980年代にはいると、軍事問題や「東側」諸国対策など、軍事・外交問題の調整も前面に出されてきた。また、EUやロシアもその参加国となった。このような過程で、サミットは、先進諸国が国連から離れて、その独自の立場を表明する場となってきている。

2. 平和の問題については、国連総会は今年2000年を「平和の文化国際年」とし、また2001年からの10年間を「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力の10年」として、取り組みを進めようとしている。そこでは、一貫して「軍事力による紛争解決」を脱却して「非暴力的な手段による平和の創造」を進める社会の形成がめざされている。ところが、サミットにおいては、1999年にはユーゴ空爆が支持され、2000年には「新ガイドライン」の推進と深く関わって沖縄における開催が決定されている。来る沖縄サミットが、「軍事力による紛争解決」を推進する役割をもつとすれば、それは県民・国民の平和創造の願いや、国連総会の決議の方向と、全く反するものである。

3. 現在、沖縄は、米軍基地の機能の大幅な強化・近代化や、自然・生活環境の破壊、米軍基地の諸外国に対する侵略的役割の拡大などが、深く懸念される状況にある。とくに、普天間基地の名護市辺野古への「移設」は、MV-22オスプレーの新規配備とともに、海兵隊の航空機能を飛躍的に強化させるものである。基地建設予定地周辺は陸域、海域とも、極めて貴重な生態系が維持されている。また、那覇軍港の浦添への移設も、従来にない大型艦船の入港が可能になり、牧港補給施設とも連動した運用が可能となるなど、これまでになかった大型で機能的な軍港が沖縄に出現させるものである。このように、日米両政府と沖縄県が推進しているSACO事案は、いずれも在沖米軍基地機能を「新ガイドライン」を全面的に対応して再構築し、強化するものである。このような軍事力強化策は実行されるべきでない。また、サミットがSACOの推進の場とされるならば、厳しい批判をまぬがれないであろう。

4. 基地被害の面からも、軍事基地は住民生活や自然環境と相容れない存在である。そもそも、沖縄の米軍基地自体が国際法(ハーグ陸戦法規)に反して建設され、「銃剣とブルトーザー」による接収で拡張された「あってはならない現実(屋良主席)」である。日本復帰後も基地内の多くの私有地が地主の意に反して基地に使用されている。その基地と配属部隊によって、重大な事件事故が引き起こされてきた。今年に入っても基地被害はとどまるところを知らない。例えば、嘉手納基地やキャンプ瑞慶覧での油流出、宜野座村沖での海兵隊の水陸両用車によるサンゴ破壊、キャンプ・ハンセンでの度重なる山火事(「慰霊の日」にも演習を強行した結果発生した)、東村の民間地域での海兵隊の演習、器物損壊事件と犯人逃亡ほう助、強盗事件が発生している。7月には、海兵隊員による少女に対する性犯罪が起こされ、それに続いて米軍兵士によるひき逃げ事件が起こった。これに抗議する緊急の県民大会には7千名が集まった。このように続発する事件・事故は、綱紀の粛正など、ことあるごとに叫ばれた「再発防止策」によっては本質的に解決不能であり、基地ある限り不可避のものであることを示している。

5. 非暴力による平和の創造という国際的潮流を促進するためにも、55年間に及ぶ米軍基地との共存によりそこなわれてきた沖縄の生活環境・自然環境を正常な状態に取り戻すためにも、根本的な軍縮こそが推進されなければならない。今回のサミットが、それに対する逆流とならないよう強く求めるとともに、私たちは、サミット開催期間はもちろん、今後とも、基地撤去と平和の創造を県内、国内、そして世界に発信していくよう、科学者の社会的責任を自覚して、全力を挙げるものである。

 2000年7月19日

日本科学者会議沖縄支部


移設容認を強く批判する('99.11.22)  公開質問状('00.2.14)

公開質問と知事からの回答('006.19)  回答についての見解('00.7.10)

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