「普天間基地の名護市への移設に関する公開質問状」に対する沖縄県知事の回答についての見解

2000年7月10日  

日本科学者会議平和問題研究委員会 委員長  河井 智康
1997年沖縄米軍海上基地学術調査団 団長  木原 正雄
日本科学者会議沖縄支部 代表幹事  武居  洋

 標記にかんする2000年2月14日付のわれわれの公開質問に対し、同年6月19日付けにて稲嶺惠一沖縄県知事より回答がありました。当初の回答要望期限(同年3月末日)よりかなり遅れたとはいえ、その努力に対しては敬意を表します。同様の質問状は名護市長にも提出しましたが、残念ながら「回答は見合わせる」との返事がありました。われわれは、引き続き名護市長に対し回答の努力を期待します。
 今回の沖縄県知事回答の内容について、われわれは下記の見解を表明し、県知事にさらなる検討を求めたいと考えます。


1. 全体を通して、日米両政府への配慮から、自治体としての主体性及び見識が感じられず、極めて残念である。例えば、基地使用の15年の期限や環境保全などの基本問題ですら、県は国に要望するまたは期待するのみであり、絶対的条件としていない。また、県の主体性のなさは、国の努力に関しても「積極的」「最小限」などの抽象的表現を評価し、国を弁護しようとさえしている点にも表れている。

2. 県の主体的判断としては、(1)住民の意思は名護市議会の促進決議に反映されている、(2)米軍基地の整理縮小につながる、(3)騒音は軽減される、(4)沖縄の経済振興につながる、の4点が示されているが、いずれもわれわれの質問のポイントをはぐらかした回答になっており、納得できない。

3. 国の対応として、(1)環境問題での研究所の設置、(2)名護市と国との使用協定の締結、を評価し、強調している。しかし、日本国民の要望を無視し続ける米軍と、それを放置する日本政府の実態から見て、そこに多くを期待するのは自治体として無責任である。また、基地建設そのものが取り返しのつかない環境破壊を招く恐れがあること、基地の運用により環境汚染や生態系破壊を受けた場合にその修復は極めて困難であることは、繰り返しわれわれ専門の研究者が指摘してきたところである。それらは、研究施設の設置や行政レベルの協議で解消される問題ではない。

4. 以上の観点から見て、史上初めて沖縄県が独自に米軍基地の存在を認知しようとする時点での県の姿勢としては、多くの問題点を残していると考える。また、このことは日本の地方自治体が国に対して取る姿勢としての悪しき前例になり、さらには、日本とアジアの安全・平和とも深く関わることでもあり、沖縄県の内政問題として看過することはできない。普天間基地の県内「移設」を強硬に推進する日米両政府の姿勢こそが批判されるべきことは言うまでもないが、沖縄県知事・名護市長は、地方自治の原点に立ち返り、「移設」受け入れの方針を撤回するべきである。われわれは、この問題を広く国内外の議論の対象としていく所存である。

以 上 

移設容認を強く批判する('99.11.22)  公開質問状('00.2.14)

公開質問と知事からの回答('006.19)  回答についての見解('00.7.10)

サミット開催にあたっての声明('00.7.19)

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