33の素敵な数学小景
- 本書は、Jiri Matousek著
Thirty-three Miniatures:
Mathematical and Algorithmic Applications of Linear Algebra
の日本語訳です。原著はAMSのStudent Mathematical Libraryの53巻として
2010年に出版されました。
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出版社(日本評論社)による「33の素敵な数学小景」の
紹介ページ。
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本書には、広い意味での組合せ論(グラフ理論、離散幾何、数え上げ、デザイン、符号等々)や
そのアルゴリズム的側面を扱った33の話題が、それぞれ独立に読めるように読み切りの形で
紹介されています。
(独立といっても、ゆるい形では前半を読んでおくと後半を読むのに役立つ部分もあります。)
本書ではこれらの話題をミニチュアと呼びます。
原著のタイトルは直訳すれば「33のミニチュア」ですね。
略称は「33m(さんじゅうさんえむ)」でどうでしょう。
話題は多岐にわたりますが、ほとんど
すべてが線形代数の応用という視点から語られます。
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原著者による序文(の一部)を読むと
本書の特徴がわかります。
- 本書を読むには、線形代数の基本的な知識が必要ですが、
ミニチュア1からゆっくり読んでいけば、
「大分忘れたけど、一応、線形代数の単位はとった」くらいの人も十分読めると思います。
日本語版には訳者による付録が50ページくらいついていて、
線形代数の基礎的な事柄などが(一部は証明つきで)まとめてあります。
序文には「ちゃんとした学部学生の知識があれば、
ミニチュア24から読み始めることもできる」と書いてありますね。
線形代数が一通り理解できているなら、そういう読み方も面白いと思います。
- 目次。
- サンプル(出版されたものと内容はほぼ同じですが見かけは異なります)。
- ミニチュア6 奇数距離(pdf)
平面上に4点a,b,c,dを配置すると、二点間の距離として、
ab, ac, ad, bc, bd, cdの6個ができます。
abcdが長方形で、縦の長さが6, 横が8なら対角線は10です。つまり
このとき6個の距離は全部偶数です。では、a,b,c,dをうまく配置すると
全部の距離を奇数にできるでしょうか? 実はどう頑張ってもできないのです。
奇数の平方は8で割ると1余ること、余弦定理、そして
ちょっとした線形代数を使って、驚くほど簡単にこのことを証明できます。
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ミニチュア11 行列のかけ算を検算する(pdf)
二つのn次行列AとBの積を普通に計算すると、成分のかけ算をn^3回行います。
nは非常に大きいとしましょう。誰かがABの積を計算してCを得たとします。
その検算を普通に計算してしまうとn^3回のかけ算が必要で、長い時間が
かかります。しかしうまくやると、例えば20n^2回のかけ算だけで
(つまりほんの一瞬で)答が正しいかどうかを非常に高い精度(判断を誤る可能性は0.1%未満)
で確かめられるのです。
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プロ(本書を講義に使ってみようかな、と思った人)向けの
内容紹介。
- 誤植など。
- 付録の参考文献。
- 原著のサポートページは
ここ。
そこに書いてある誤植等は日本語版では直してあります。
- 原著のpreliminary versionは、
ここからダウンロードできます。
- 原著者のMatousekさんは52歳の誕生日前日の2015年3月9日に病気のため亡くなりました。