読書と日々の記録2008.4下

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■読書記録: 30日短評4冊 24日『教育改革を評価する』 18日『知識資本主義』
■日々記録: 26日7歳児が考える「バドミントン」の語源 19日9歳児に相談 16日反抗的な9歳児

■今月の読書生活

2008/04/30(水)

 ぐわ。もう4月が終わりですか。なんだか早いなあ。まあそれでも今月は,懸案だった仕事がいくつから片付いたからよかったけど。でも別件がまだまだ来月も続く...

 今月良かった本は,『ルポ 貧困大国アメリカ』かな。良かったというか,衝撃的だったんだけど。

『チャイコフスキー・コンクール―ピアニストが聴く現代』(中村紘子 1988/1991 中公文庫 ISBN: 9784122018587 \720)

 大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。チャイコフスキー・コンクール審査員として,その審査の内実が書かれたエッセイ系ノンフィクションであるが,それだけでなく,ピアノコンクールにまつわるこぼれ話的な話から,日本のピアノ教育,ソ連の社会情勢や音楽界の話など,多彩な内容が論じられている。半分は薀蓄系と言えるかも知れない。本書で私が面白かったのは,プロのピアノストである筆者がピアノの演奏を論じる言葉の多彩さである。「音は痩せ全体に輝きが乏しい平凡でこぢんまりとしたのもの」(p.43)とか,「成熟を感じさせるくぐもって美しいピアニシモ」(p.153)とか,「複雑に重なりあう音の層を,あれほどの清澄さと構成感をもって弾き分けた」(p.195)という具合である。こういう表現といい,本書に見られる手馴れた思索系の文章といい,筆者の才能の凄さを感じるとともに,この人ってなんか男性的な人なのかも,と思った。勝手な印象だけど。

『自分さがしの青年心理学』(西平直喜・吉川成司編著 2000 北大路書房 ISBN: 9784762821936 \2,300)

 青年心理学が苦手なので買ってみた。特に知りたかったのは,エリクソンが,どんな研究(方法論)を元にアイデンティティだの言い出したのか,ということだった。本書によるとそれは,ルターの伝記を研究した伝記法研究だったようだ。ほかにも,エリクソンが青年期を,空中ブランコの曲芸になぞらえたという話や,エリクソン自身のアイデンティティに関する伝記的な話が,コラムで触れられている点もよかった。

『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』(渡辺健介 2007 ダイヤモンド社 ISBN13: 9784478000496 \1,260)

 ターゲットは中学生ぐらいを想定しているようだが,ビジネス書によく出てくるようなツールを紹介しながら合理的な問題解決のやり方について説明した本。まあ平易に書かれていて悪くはないかもしれない。あとがきに筆者は「問題解決能力に似たクリティカル・シンキング(批判的思考)」(p.112)と書いているが,本書に書かれている問題解決と批判的思考との関係はまったくわからなかった。

『アメリカが見つかりましたか 戦前篇』(阿川尚之 1998 都市出版 ISBN: 9784924831797 \1,890)

 戦前にアメリカに渡った日本人について書かれた本。扱われているのは,ジョン万次郎,福沢諭吉,内村鑑三,新渡戸稲造,有島武郎などである。趣向としては面白いし,この人はこんなふうにアメリカにわたって,こんなふうに過ごしていたのかあ,というのは分かって悪くないのだが,しかし,タイトルにあるように,その人がアメリカをどのように見つけたのかについては,よく分からなかったのがちょっと残念だった。もっとも,きちんと読み込み,自分なりに整理してみれば,実は書かれているのかもしれないけど(普通に読んだ限りでは,アメリカに行ったことのある人の伝記,という感じだった)。

7歳児が考える「バドミントン」の語源

2008/04/26(土)

 今日,下の娘(小2)が,うまれて初めてバドミントンをやったらしい。上の娘,お友だち姉妹と,そのお母さんと遊んだらしいのだ。

 帰ってきてから,こう言っていた。

 「パパぁ,どうしてバトミントンっていうか分かるよ。 バットとミットがあるから。バットは...ラケット。。。あ,だめだ」

 こういうこと,思いつくのもすごいけど,だめだと分かるのもすごいな。いつの間にかミットという言葉も知ってるようだし。やっぱり学校に行き始めると,親の知らないところで成長しているようだ。

 #「ミットってなあに?」と聞いてみたら,「ラケットでバーンって打つやつでしょ?」と言っていた。なーんだ,シャトルのことか。

■『教育改革を評価する―犬山市教育委員会の挑戦』(苅谷剛彦ほか 2006 岩波ブックレット ISBN: 9784000093859 \480)

2008/04/24(木)

  「現行制度の枠組みの中で,義務教育として果たすべき学校の役割を市内すべての学校で,教師の専門性を高めることを通じて,最大限,実直に発揮する方向へと教育現場を支援し,方向付け」(p.2)た犬山市教育委員会の取り組みを,教育社会学者が評価した評価プロジェクトの報告書的な本。

 中心はデータ分析部分なので,研究発表を読んでいるみたいで,とても面白いというわけにはいかなかったが,ほとんど知らなかった犬山市の取り組みについて知ることができた。

 なかでも,犬山市のいう「学び合い」を評価に乗せるために,「具体的な行為レベルに落として説明してもらうことを要請した」(p.16)なんていう話はちょっと面白かった。研究者の押し付けの評価尺度ではないという点で。

 本書は評価の話が中心で,どのようにして教師の専門性を高めたか,なんて話はあまりない。次は犬山市が出している本を読む必要があるかなあ。

9歳児に相談

2008/04/19(土)

 先日,うちにかえると,「まーちゃん(仮名)クラブ とくべつチケット」と書かれた紙が何枚か落ちていた。下の娘(小2)の字だ。こういうものを作って遊ぶというのは,下の娘らしい。

 何のために作られたか分からないけど,楽しそうなので,さっそく1枚拾って,上の娘(まーちゃん。小4)のところにもって行って,「これ,お願いします」と言ってみた。

 すると上の娘は「何か相談ですか?」 どうやら上の娘が相談に答えてくれるクラブらしい(なんじゃそりゃ)。

 ということでさっそく聞いてみた。「最近,ある女の子に,『いいよもうパパのこと無視するから!』って言われたんですけど,どうしたらいいですか?」(

 すると上の娘は,「ああそれなら,しばらくしたらいつもどおりに戻りますから大丈夫ですよ」とアドバイス(?)してくれた。

 なーんだ,本人も,勢いで言っているだけだと言う事を自覚しているらしい。よかったよかたった(今のところは...)。

■『知識資本主義』(L.C.サロー 2003/2004 ダイヤモンド社 ISBN: 9784478290477 \1,800)

2008/04/18(金)

 最近よく,「知識基盤社会」というような言い方を目にすると思うのだが,おそらくそれと関係しているであろう「知識資本主義」なるものについて知ることができれば,と思って読んだ。しかしそれがメインで論じられているわけではなく,残念であった。著者サローも,私は文章がとても好きなので,サロー節(私の勝手な呼び名なのだが,大局から本質をズバリと突いたような言い回し)が見られず,これも残念であった。

 もっとも,知識資本主義について書かれたくだりがまったくないわけではない。そこで,私が見つけた箇所を挙げてみよう。まず,「知識資本主義は,過去二世紀の工業化中心の国民経済に取って代わろうとしている」(p.263)とある。これを彼は「第三次産業革命」と呼んでいる。「グローバリゼーションは,資本主義と知識集約的社会への移行を加速させる」(p.113)ともある。正確な表現かどうかは分からないが,グローバリゼーションによって単純労働は賃金の安い国へ移動して行き,独創的な知識を創造する仕事が残るから,ということなのだろうと理解している。

 では具体的な知識労働とは何か。「知的所有権が今日の知識集約型経済社会すなわち知識資本主義の核となっている」(p.204)とある。単純労働なきあとでの社会での競争力は,著作権やブランド名(商標),特許といった,他が持たないモノによって生み出されるということのようである。あるいは,「戦争は最も優れた知識労働者がいる軍隊が勝利するのである」(p.260)ともある。それは要するに「軍師」ということだろう(もちろん比ゆ的な意味で)。

 ではそのような社会では何が必要なのか。筆者は,知識集約的経済は「教育の比重が大きくなった」(p.164)と述べている。ということで,教育を通して軍師を育て,彼らが活躍できるような社会制度を整備することがこれからの世の中で求められていること,ということになるだろうか。

反抗的な9歳児

2008/04/16(水)

 最近,上の娘(9歳10ヶ月)がときどき反抗的になる。

 今朝も,おしゃべりをしていたら,いつの間にか娘がイヤがる話題になっていたらしく,こういわれた。

 「いいよもうパパのこと無視するから!」

 もっとも,しばらく(5分ぐらい?)してから別件でカラんでみたら,まったくいつも通りの反応に戻っていて,ほっとしたのだが(でもそのうち,戻ってこなくなるのかな?)


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