III. 自然の美しい海とその生産力を阻害する

(1)ヘリポートが予定されている海域は、景観の美しさとともに、おだやかでかつ生物環境としても優れた水質をもち、また一時大被害にあったサンゴ礁も着実に復活しつつある。(流れ、塩分、溶存酸素、pH、プランクトン、サンゴの調査:調査点を<p.3>に示す)

(2)ヘリポート建設は、どの工法にせよ、海中の光合成を阻害しサンゴ礁の健全な発達を阻むことは、十分予測される。サンゴ礁の機能は、

@沿岸の天然の防波堤であること

A沿岸の植物・動物生存の要(かなめ)的存在であること

B環境浄化等の役目もしていること

があげられ、これらの機能の阻害は生態系破壊に通ずる。

(3)4,000人の米軍移駐が海水の富栄養化による海洋汚染を引き起こすことが予測される。温帯域の本土に比べ海岸の渚が少ないサンゴ礁域では富栄養化への抵抗力は相対的に弱いと考えられる。富栄養化は赤潮、青潮の原因ともなり、また濁度の増加は光合成阻害となり、サンゴ礁へも影響することが危惧される。参考資料

(4)工法によっては、大気との物質循環が阻害され、とりわけ貧酸素水塊ができることが心配される。これは青潮となり、沿岸の生物に大きな被害をもたらす危険がある。

(5)その他の自然破壊:大浦湾岸・辺野古崎のウミガメ産卵場、ヘリポート予定海域での魚類の産卵も影響を受けることが危惧される。ウミガメに関しては、油流出の他、海流変化による砂洲の変化、夜間のライト照明なども原因することが考えられる。なお、実際の調査でも魚卵(種は不明)が採集されている。

IV. 平和で豊かな漁業にとっても危険と生産低下が予想される

(1)ヘリポートと隣接することで、辺野古漁港は日常的に事故等の危険にさらされる。普天間基地でも、ヘリコプターの事故は毎年数件起きており<表-1>、漁港周辺は常に危険と隣り合わせを強いられる。

(2)操業禁止区域の拡大による漁獲量の低下は確実である。自然破壊による資源の減少とともに、辺野古周辺での漁業は大幅に制限される。

(3)ヘリポートによる魚群分布の変化が予想され、漁業生産の低下が危惧される。これについては、離発着の轟音によって散逸するという考え方と、逆に暗部への集魚効果があるという考え方がある。魚種によっても異なるものと思われるが、いずれの場合も漁業生産にとっては漁獲不可能となり、マイナスに作用するのは確かである。

(4)生物生産の質的変化は広範囲に影響をもたらす危険がある。辺野古地域のサンゴ礁を要とする生物生産の変化は、単に辺野古地域の生物相を変えるだけでなく、魚類の移動、産卵場の変化など、周辺漁場への波及も十分考えられる。

(5)名護市新総合計画と矛盾する

 名護市は平成元年に市の新総合計画を立てた。その中の「水産業の振興」をみると、10年計画において次の内容を含む基本計画を出した。資料参照

・今後の生産量拡大(約2倍にする)と人材育成

・漁業環境の整備と漁場の保全・育成

今回のヘリポート計画は、市政策と正反対の方向を指向するものである。

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