読書と日々の記録2007.09下

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■読書記録: 30日短評5冊 25日『ザ・ファシリテ−ター』 20日『OLたちの「レジスタンス」』
■日々記録: 27日道田さんと会う 24日かぜひいた 15日出張日記

■今月の読書生活

2007/09/30(日)

 9月も終わりかあ。もう少ししたら授業も始まるわけで(その前に授業準備もそろそろ始めないといけないわけで)、そうすると、一日中自分がやりたい/やるべきと思う/やれる仕事だけができるのも、あと数日か。

 今月よかったのは、『「静かに!」を言わない授業』(なるほど学び合いではそういうことがおきているのか)と、『ザ・ファシリテ−ター』(なるほどそういう障害の中をそういうふうにファシリテートするのか)あたりか。

5.『ヨーロッパ型資本主義─アメリカ市場原理主義との決別』(福島清彦 2002 講談社現代新書 ISBN: 406149628X \756)

 アメリカ型(アングロ・サクソン型)とは異なる、ヨーロッパ型の資本主義のあり方について論じた本。アメリカ型の資本主義とは、市場原理主義の資本主義である。それに対するヨーロッパ型の資本主義とは、福祉の充実による社会の安定を重視する、福祉重視型資本主義である。それは、「経済成長最優先、効率至上主義で資本主義社会を作るのではなく、落ち着きとゆとりのある社会を作り、貧富の差をそう大きくせず、治安のよい状態を維持していこう」(p.118)というスタイルである。そのためには、規制と規制緩和の両者のバランスを取ることが大事になってくる。経済成長ではなく「人的資本への投資」を目標とし、上記のような社会を実現することが、EUの経済改革の目標になっているそうである。本書では、よく知らなかったEUの歴史や意義、今後について知ることができた。なお広い意味では、日本型資本主義も福祉重視型資本主義に入る。それなのに今の日本は、人的資本を重視することなく、(需要も供給も減ることが明らかな時代に)成長を目標にしようというチグハグなことをやっている。そうではない道がありうることを知るために、とても示唆的な本である。

『図で考えれば文章がうまくなる─「図解文章法」のすすめ』(久恒啓一 2005 PHP研究所 ISBN: 9784569641386 \1,155)

 ワンアイディア本だった。基本的な主張は単純で、タイトル通り「図で考えれば文章がうまくなる」(正確には「文章が書ける」かな?)ということである。これまでの文章読本で文章が書けなかったのは、文章の書き方以前に、文章を書くための考え方が指南されていなかった、ということであり、本書はその方策を「図解」に求めるわけである。図解といっても、キーワードを考え、キーワード同士の関係を線や矢印で結ぶ、というだけである。そのような核心の章以外は、これまでの代表的な文章読本の内容が分析されていたり、実際に図解と文章が載せられたりしているだけで、どのように図を描き、それをどのように文章化するのか、行き詰ったときにどのように図解を見直すのか、なんていうことは書かれていなかった。その辺はとても残念。なお筆者は、大学生に卒論を書かせるときでも、まず図解させるそうである。これは悪くないアイディアだと思った。

『アラベスク (1)〜(4)』 (山岸凉子 1971-1975/1994 白泉社文庫 ISBN: 4592881117/ 4592881125/ 4592881133/ 4592881141 \610-650)

 マンガなのだが、けっこうな分量があることでもあり、また最近読書冊数が減っていることもあり、記録することにした。妻が買ってきたバレエ漫画である。最初のほうを読んでいるときは、これは要するにスポ根ものだな、と思った。そのうち、何かに似ていると思ったら、『ガラスの仮面』だった。ただし本書のほうが古いのだが。バレエの世界を知ることができる点では悪くないのだが、久々の少女漫画、しかも1970年代のものでもあるし、また外国(ソ連)が舞台ということもあり、最後のほうまで登場人物の見分けがつかなかった。

『素晴らしきラジオ体操』(高橋秀実 1998/2002 小学館文庫 ISBN: 9784094181012 \579)

 ラジオ体操が今のような形になった変遷を追ったノンフィクション。ラジオ体操がなぜ郵政省簡易保険局が制定したのかとか、戦前、戦中、戦後のラジオ体操がどのような役割を果たしていたのか、なんてことがわかる。戦中、日本は占領先各地でラジオ体操を始めたのだとか、戦後、その姿が軍国主義的だということで、マッカーサーに禁止されたとか、県民体操、町民体操という形で下から盛り上がる(ような形をとる)ことで、結局「民主的」にラジオ体操が復活した、なんていう話は面白い。まあそれでも、ノンフィクションとしての面白さは、私にとってはそこそこというところだったのだけれど。

『フリートークで読みを深める文学の授業』(桂聖 2003 学事出版 ISBN: 4761908785 \1,470)

 再読。やはり興味深い。何かの授業でこういうことができないものかなあと思う。大学が小学校と一番違うのは、先生と子どもたちの1日中の関係が作れないことだろう。それでも工夫の使用はあるのかもしれないが。たとえば筆者も提唱している「書き込みノート作り」とか。そういうものがないと、いきなりフリートークをしても話し合いは(小学生でも)活性化しない、と筆者は述べているのである。

道田さんと会う

2007/09/27(木)

 先ほど研究室に道田(みちだ)さんが来られた。親兄弟親戚以外の道田さんにお会いするのは,生まれて初めてか2度目ぐらいである。

 道田さんは東大の海洋研究所の先生。今,沖縄で海洋学会が開かれているので来られたのだ。お会いしたことはなかったが,数年前,同姓ということで,メールのやり取りをしたことがあった。今回,うちの大学に来る機会ができたというので会いに来られたのだ。

 昨日の夜は,歴史に詳しい父に電話して,父が把握している道田の名前の由来を確認した。「続日本記」に出てくるとか,「新撰姓氏録」に出てくる,なんてことをである。当時は京都にいたらしい。父の推測では,天草・島原の乱のあと,人の少なくなった天草に京都から移住してきたのではないか,ということだった(本家の家系図では元禄までさかのぼれるらしい)。

 今日は道田さんにそういう話をしたりしたわけだが,しかし,名前の話なんで,数十分もすれば尽きてしまう。あとの時間は,ご専門の話,研究所の話,学会の話,院生の話,その他の四方山話をしていた。久々に異分野の人と話をしたので,とても面白かった。

 そのうち,うちの妻から連絡が来たので,大学まで来させ,大学の近くにある「道田橋」にお連れして記念写真を撮り,学会の評議会がある場所まで送ってお別れした。

 昨日からいろいろ準備して臨んだだけに,なんだか一大イベントが終わったという感じだった。

■『ザ・ファシリテ−ター─人を伸ばし、組織を変える』(森時彦 2004 ダイヤモンド社 ISBN: 9784478360712 \1,680)

2007/09/25(火)
〜山あり谷あり〜

 ファシリテーターについての本だが、これはいい本だった。とある会社で若くしてセンター長になった女性が、ファシリテーターの力を借りながら、また自らもファシリテータ的なリーダーとして振舞いながら、人と人との相互作用を活発にし、創造的なアウトプットを引き出すさまが、小説仕立てで描かれているのである。

 ファシリテーションの本というと一般に、こうすればうまくいく、とか、こうすればうまくいった、という話が中心になりがちであるが、本書では、リーダーに対して抵抗感を持っているメンバーを相手に、抵抗を受けながらも次第に受け入れられていく様子、なんてのが描かれており、実際的な感じがした。なおそれは前半の話で、中盤では会社幹部を対象にファシリテーションをやろうとして失敗し、後半では、日産でいうところの「クロス・ファンクショナル・チーム」を作り、一進一退を繰り返しながらも、次第にファシリテーションを実を結び始める、というような内容になっている。

 ファシリテーションを魔法の杖として、こうすれば必ずうまくいく、みたいな描き方ではなく、このような相手にはこのような攻め方を試みる、うまくいかなければ別の方法をとる。それでうまくいく場合もあるし、いかない場合もある、という現実でもありそうな場面が多数描かれているのが本書のよい点だと思う。ファシリテーション関係の本のいくつか読んだあとに読むととてもよいのではないかと思った。

 一箇所、なるほどと思ったところを引用しておこう。

組織は、形成(フォーミング)された後、すぐに機能(パーフォーミング)しはじめるのではなく、その前に、ストーミング(混乱・対立)があり、ノーミング(統一)が進んではじめて機能しはじめる(p.214)

 もちろんこれ以外にも、実用的な知恵が随所に描かれており、実際に何かをファシリテートしている最中にも読むと、役に立つ感じである。

かぜひいた

2007/09/24(月)

 土曜日の午後から今朝まで微熱続き。

 出張の疲れだろうか。

 妻も同時にひいたので、せっかくの3連休、どこにも行っていないのだが、子どもたちは二人で、ごっこ遊びなんかをしながら、楽しそうに遊んでいる(けんかもしてるけど)。

■『OLたちの「レジスタンス」―サラリーマンとOLのパワーゲーム 』(小笠原 祐子 1988 中公新書 ISBN: 4121014014 \660)

2007/09/20(木)

 OLとサラリーマン(総合職男性)がどのようなかかわり方をしているのかについて、インタビューを中心とした社会学的手法で明らかにした本。本書は筆者の博士論文(シカゴ大学)を基にしており、インタビュー対象は100人に及ぶ。それだけでなく、考察がかなり学術的な匂いを匂わせている。といっても、随所で先行研究が引用されているところぐらいで、それ以外は、インタビューが元になっているということもあり、読みにくいということはない。

 結論からいうとOLは、出世競争から除外されており、男性と女性を不平等に扱うシステムにいるがゆえに、権限がないとともに責任もない。しかし日本の会社の仕事はある部分OLに強く依存している。そのため、それを逆手に取ったパワーゲームを行うことができる。それは、感情を隠さない言動をするとか、個人的な好みで仕事を選ぶとか、仕事をしないとかである。それは、「OLにとって、男性優位の組織の中で少しでも自身に有利な状況を引き出す「手段」なのだ」(p.176)と筆者は論じる。ただしそうすうることは、伝統的な性役割を再生産することになるし、また、ある種の女性観(感情的とか非論理的とか公私混同とか)を強調することにもなる。

 本書で採用されている調査方法でどこまで一般化できるのか疑問が残る点があるものの、OLとサラリーマンのパワーゲームの一つの描き方として、まあ面白くはある本であった。

出張日記

2007/09/15(土)

 今日は移動日。あったことのメモ書きを。

 ・昨日は台風で午後から飛行機が欠航した。今日はどうなることかと思ったけど、30分遅れで無事に飛んでくれた。ただし、こういうときは前日に乗れなかった人が空港に来るので、ものすごい混雑だった(急遽、手荷物は預けないことにしたので、混雑は回避できたけど)。台風って飛行機が飛ぶ飛ばないだけでなく、翌日、空港が混雑することを念頭に行動すべきだな。

 ・空港に向かうモノレールで、とある同僚と一緒になった。3人いる子どものうちの一人だけを連れて、二人で東京に遊びに行くのだという。行く先も、上野動物園と博物館ぐらいで、あまり決めていないそうだ。子どもを連れてそうやって気軽に旅行するのもいいなあ、と思った。

 ・宿泊は浅草。ためしに、普段の外食の倍ぐらいの値段のとんかつ屋に入ってみたが、2倍のうまさではなかった(というか、普通じゃないの?と思った)。残念。やっぱりこういうときはちゃんとリサーチすべきか。

 ・夜8時前、浅草寺に行ってみたら、ライトアップされており、観光客もたくさんいた。しばし観光客気分。寺の横では、アカペラ5人組がライブをやっていた。

 ・明日から、40分(+徒歩10分)かけて学会へ。先ほどプログラムをみていたら、だんだん楽しみになってきた(それまでは、あんまり楽しみではなかったわけだが)。


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