30日短評10冊 29日『イチローの流儀』 24日『通勤大学MBA〈3〉クリティカルシンキング』 18日『イチローイズム』 | |
| 29日大講義での出欠チェック法 24日静岡に出張 18日日常雑記 |
今月は結構本が読めた。読まないといけないような気になったというか...(こんなに読んだのは2005年7月以来4年ぶりだった!) でも,その代わりかどうかは分からないが,仕事はあまり進まないままに9月が終わってしまう。
今月良かった本は『イチローの流儀』。それと,『生物と無生物のあいだ』も割と良かった気がする。
オリックス番記者としてイチローを1994年から取材しており,個人的趣味に近い形でその後も継続的にインタビューを続けており,メジャーリーグでのイチローの試合はおそらくもっとも多く見て取材している記者による,イチローの本。さすがイチローのことをよく知っているという感じがする。
先日読んだ『イチローイズム』ではあまり感じなかったのだが,本書で感じたのは,反省的思考者としてのイチローの姿である。たとえばイチローは,一日の反省をグラブを磨きながら次のようにやるという。「昨日試合後に何を食べたか,よく眠れたのか,というところから,実際にゲームが終わるまでに起こったすべてのことをよく振り返って考えてみる」(p.13) まあ試合後の振り返りはプロ選手なら誰でもやるのかもしれないが,「昨日の試合後に食べたもの」も含め,本当にすべてを振り返っているようで,なかなかすごい。
おそらくこのような振り返りを通して答えを得たであろうことが,本書には書かれていた。それは2002年6月。成績は大リーグ2年目で自己ベストの3割8分4厘で固め打ちも何度も行っていた時期である。きちんとスイングできているのに打球が予想と違う飛び方をするケースが増えており,打撃感覚にかすかなズレを感じていた。それが上体の固さから来ていることは分かったのだが,ではどうすればその力を抜くことができるのか。3ヶ月近く試行錯誤した末,「ひざの力を抜けば上半身の固さがとれる」ことを見出している。
またイチローは,あらゆる可能性を考えて次に備える,ということも行っている。たとえば1998年には,スケジュールのハードなメジャーリーグに行くことを意識して,「眠らずに試合に出る」という試みをしており,思った以上に普通にやれることを確認している。あるいは,あるときは試合前の打撃練習を行わずに試合に臨んだり(それでもホームランを打ったのだそうだ),わざと2ストライクまで追い込まれてからどれだけ力が出せるかを試したりしている。
こうやってみると,イチローのすごさは,あらゆる可能性を考えること,ヒットが打てたかどうかなどという結果とは無関係に自分の感覚を常にチェックし,その結果を反省的に考え,試行錯誤して自分なりの答えを得ていること,などから来ているようだ。そしてその中核にあるのは,反省的思考といえるのではないかと思った。
とある知り合い(大学院生)が悩んでいたので,私のやり方を振り返ってみました。
一番簡単なのは座席固定方式でしょうね。前に専門学校で教えていたときにやっていました。初回に座席表(白紙に座席枠のみ印刷したもの)を回して自分の場所に名前を書いてもらえば座席表ができますので,次回以降はそれで空席をチェックすればすみますよ。
大学で私が長いことやっていたのは,ラジオ体操方式。学生には各自,スタンプカードみたいなものを持たせ,毎回の授業時に,私がそれにスタンプを押して回ります(単なるスタンプカードではなく,下記の大福帳のように授業の感想を数行書けるようにすると,あとで見る楽しみができます)。このやり方だと,150人でも5分もかかりません(その間,学生には考える課題を与えておくといいでしょうね)。ちなみにスタンプは注文品(シャチハタ?)で,私の名前と日付が入っているので,まあ偽造は難しいでしょうね。ただこのやり方だと,印鑑をもらった直後に逃亡する学生がでます。その学生をあぶりだす手はもちろんありますが,そんなことばっかり考えていると,授業が楽しくなくなるのが難点です。
現在やっているのは,大福帳+ワークシート方式。大福帳(三重大学の先生が提唱しているやつ。こちらに紹介記事あり)は,A4表裏で15回分の授業の感想が書けるようになっています。毎回それを授業冒頭で配布し,授業の最後に書かせてから集めます。これだけだと代筆は可能なわけですが,私の授業では毎時間,4〜5人のグループになって話し合いをさせており(15分程度),ワークシートに他メンバーの名前とその人の考えを書きこみながら考えさせるようにしています。授業最後には,大福帳と一緒にそれも出させるようにしています。ワークシートまで偽造するのは大変ですから,代返は無理だろうと思います(私の授業では,話し合いの結果を毎回1割の学生をランダムに当てて発表させますので,代返するときはそこまでカバーしてあげないといけないし...)。
私もこのやり方にたどり着くのに15年かかりましたので,いろいろ試行錯誤してみてください(^_^;)
2ページ1テーマで書かれたクリシン本(どこかで見たことのあるようなつくりだ...)。ずっと以前に購入していたのだが,なんとなく読む気がしなくて放っていた。まあでもせっかくだから,と読んでみたら,意外と悪くない感じがした。というのは,ビジネス系クリシンの概要がなんとなくつかめるようなつくりになっていたからだ。
まず本書ではクリティカルシンキングを,「物事を客観的,論理的に考え,それを相手にわかりやすく伝えるための思考方法」(p.18)と定義している。この定義がいいかどうかはさておき,本書ではクリティカルシンキングをこのように捉えているのだなあ,と理解した。で後は,論理の基礎,論理の整理,アウトプットでの活用,という3部構成になっている。なかなかシンプルで良い。
第一部(論理の基礎)で扱われているのは,ゼロベース思考,演繹と帰納,その他(「なぜ」を繰り返す,軽率な判断に留意する,など)となっており,ちょっと雑多な印象がある(まあたいていの本はこんなものなんだろうけども,それぞれの概念の間の関係が見えるといいのになあ,と私は思ってしまう)。
第二部(論理の整理)で扱われているのは,MECE(モレなくダブリなく)とフレームワーク思考の2つ。フレームワーク思考って何なのかよくわかっていなかったのだが,ファシリテーションの本にときどき出てくる「SWOT分析」のようなものがフレームワーク思考なのだということが分かった。これは要するに,ある事柄(たとえば経営環境の分析)をモレなくダブリなく行うための枠組みであり,それを使って遺漏なく考えることがフレームワーク思考ということだ。フレームワーク思考といってもこういう特殊な(?)ものだけでなく,「質・量」とか「事実・価値」とか「長所・短所」とか「過去・現在・未来」なんていうものも,要するにある事柄をモレなくダブリなくチェックするためのフレームワークになるわけで,フレームワーク思考に含まれている。本書のおかげで,フレームワーク思考を自分の日常レベルで理解できたし,それとMECEの関係も分かったのは非常に良かった。
第三部(アウトプットでの活用)で扱われているのは,ロジックツリーとピラミッド構造。ロジックツリーは原因追究と問題解決に使えるということで,その概要と事例が挙げられている。ピラミッド構造は,相手にとって分かりやすい文章を書くため,という位置づけで,バーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』をベースに書かれている。それぞれはまあわかるとしても,できたら両者の関係がわかるといいなと思った。というのは,ツリーもピラミッドも,基本は同じ構造だと思うのだ。それらを別の名前で呼び,別に扱うのは,そうする理由が何かあるのだろうか。そしてそれらの関係はどう考えればいいのだろうか。そういう話は一切ないので,これに関しても第一部と同じように,雑多というか断片的な印象を受けた。
というわけで細部に不満は残るものの,ビジネス系クリシンの各種概念の理解が多少進んだという意味では悪くない本であった。
せっかくの連休なのに,3日間は学会出張でつぶれてしまった。
学会があったのは静岡。最近,沖縄−静岡線ができたので,それに乗ったのだが,静岡空港から駅前まで,バスで1時間。といっても高速道路(東名)は混んでいたので,実際には1時間15分ぐらいかかった。結構遠い。
静岡名物は,おでんらしい。たしかに味くーたーな煮汁で,おいしいというか面白いというか。ついでに,焼酎を緑茶で割った「静岡割り」なるものもあった。特定の居酒屋のみかと思ったらそうではなく,2日目に行ったところにもあったので,ごく一般的なものなのかもしれない。なんか悪くない感じの味だった。
生まれて初めて静岡に降り立ったのだが,残念ながら,富士山を見ることはできなかった。曇っていたので。帰りは羽田経由で帰ったので,山側に座って見ていたのだが,まったく見えなかった。残念(たぶん富士山を近くで見たのって,ずーっと前に新幹線で東京に行ったとき1回きりかもしれない。神奈川から遠くの富士山がうっすらとみえた,ということはあったけど)。
学会の開催のされ方なんかを考えると,静岡県に行くのって,これが最初で最後かも,と思った。その割にはなーんの観光もできなかった...
イチローのインタビュー集。すべてのインタビューを通してイチローがファンに伝えたかったことは,「僕の行動には常に意味がある」(p.262)ということだそうだ。確かに彼はいろんなことをきちんと説明している。しかしそれだけでなく,彼は,「体が欲するままに練習をする」(p.20)というように,感覚的なものも非常に大事にしており,面白いなと思った。
それ以外に彼が大事にしているなと感じたのは,自分を評価する観点を自分でしっかり持っていること(他人に惑わされたくないと思っていること)。それはたとえば,去年首位打者を取ったから今年も取ってほしいとか,狙うべきとか,首位打者を取ることに価値があるというような雑音に対する考え方のようだ。そのことについてイチローは,次のように述べている。「(首位打者というだけですごいと思ってしまうような)そういう価値観を,僕が彼ら(多くの人)に負わされるわけにはいかないんですよ。世の中の流れに乗ってしまうことの怖さ,何が大事なのかということは,自分で知っておかなければいけません。」(p.94)
あるいは別の箇所でも,「僕がそういう(他人との比較で生まれてくる)価値観の中に自分を見出すわけにはいかないんです。〔中略〕僕らが長い間,プレーをし続けようと思ったら,そんなところに目をやっていられないんです。」(p.221)とも述べている。これって,野球だけに限らず,ブレずに人生を生きていくためには大事なことだと思った。
なおイチローは中学生のころは,監督のいうことを聞かなかったのだそうだ。それは,監督とは自分の形にはめたがるというイメージを持っていたからなのだが,「でも今は,まず聞く自分がいる。しかも,それをさらに振り分ける自分もいます。」(p.234)と述べている。自分の価値観をしっかりともち,その上で人の意見も聞き,しかし振り回されないように振り分ける。なんだか最強かも,と思った。